📖第2章 名誉と幻滅

📘目次


ローマの荒廃とグレゴリウスの誕生

ローマの荒廃と瓦礫の街を横目にしながら、名門貴族の跡取りとして育ったグレゴリウス。

ラテン語を自在に操り、
修辞学で雄弁を学び、
法と哲学を修める。

その高い教養、行政能力、そして政治的な駆け引きの鋭さで、彼は当時から一目置かれる存在でした。

アルティメット・ローマ人!?

やがて血筋と時代背景も相まって――
後の世の人々は彼をこう呼ぶようになります。

「最後のローマ人(Ultimus Romanorum)」

いやー、すごい!

Ultimus Romanorumウルティムス ロマノルムと読みます。
ウルティムスとはアルティメット(究極)の語源。

つまり彼はアルティメットローマ人!!

…どこかの戦闘民族ですか?
手から光線出して惑星破壊したりするあの方々と同じ響きを感じてしまいます。

若き市政長官としての挑戦

そして西暦572年ごろ。グレゴリウスは大体30歳前後でなんと、当時のローマ市における最高の文官職――
「ローマの市政長官(Praefectus Urbi Romae)」に任命されます!

Praefectus Urbi Romaeプラエフェクトゥス ウルビ ロマエと読みます。

いちいち名称がかっこいい!

天空の城から降りて来た王族の方ですか?
「人間が◯のようだ!」とか言っちゃう系ですか?

若きグレゴリウスは
「ここからだ!ここから俺が!この荒廃したローマ市を変えてやる!」と。
「わくわくすっぞ!」と。
やる気に満ち溢れていた事でしょう。

行政の現実と絶望

しかし。

グレゴリウスの前に広がっていたのは、美しい行政でも、誇りある統治でもありませんでした。

官吏たちは疲弊し、給料も物資も不足しておりました。
ビザンツ帝国(東ローマ帝国)の支配下にありながら、ローマ市はほとんど放置状態。
街路には未だ孤児と難民、死体と物乞いがあふれ、

司教が行政の代行をしている始末。
…最高の文官職と言っても。当時は最早、その権限すら失われていました。

彼が法を整えても、道は直らず、税は納められず、飢えと疫病が毎日のように民を倒していく。
彼が指示を出せば出すほど、無力さばかりが突きつけられる。

何もできない。何も通用しない。。

グレゴリウスだけではありません。
歴代市政長官を務めた人たちも。この時代の行政を立て直す事は誰にもできなかったのです。
それほどにローマ市は荒廃してました。

むしろ歴代の中でもグレゴリウスは、崩壊寸前の市政に秩序を取り戻そうとした最後の市政長官とも呼べる存在でした。

それだけに。その苦悩と挫折は深かった事でしょう。

修道士への転身

「最後のローマ人(Ultimus Romanorum)」

それは称賛であり、同時に古代ローマの最後を象徴するものでもあったのです。
古代ローマの誇りと秩序を守ろうとする彼の努力は、すでに崩れ落ちた都に響かぬ叫びだったのです。

グレゴリウスは市政長官の座を1年足らずで、自ら辞します。
そして父の残した屋敷を修道院に改築し、財産のほとんどを売り払い、七つの修道院を建て。頭を剃髪し、灰色の修道服に袖を通しました。

グレゴリウスは朝から晩まで畑を耕し、孤児の食事を運び、写本を行い、夜にはろうそくの火の下で詩篇を黙読したと言われています。

彼の変わりように市民たちは驚き、貴族たちは理解に苦しみ、家臣たちは戸惑った事でしょう。

究極の反逆

名誉ある公職を自ら捨て。土地も財産も持たず、粗末な服をまとい、畑を耕し、労働に従事する修道士となる。

これほど痛烈な反逆が、他にあるでしょうか?
ローマの名誉も、貴族の誇りも、

すべてを脱ぎ捨てるという反逆!

…物凄いキレかたです。
ブチ切れてます。グレゴリウスさん。

アルティメットローマ人2ぅぅ…(ゴゴゴ)!

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